2024.10.26
工務店のあるべき姿PART2
この記事を書いた人
サンエム建設株式会社代表取締役 大山剛人
パッシブハウスを中心とする高気密・高断熱住宅の専門家
建築歴45年、創業は1999年。100年快適に住める健康住宅を思い高気密・高断熱を極めパッシブハウス住宅をわかりやすくお伝えします。
【私の考えは工務店として年間完成棟数10~20頭前後の家づくりをしたいと思っています。それはなぜか? それは年間30棟~100棟くらいの棟数をやっている工務店だと、経営を継続していくことに一番リスクを負うそうです。運転資金が増大し資金繰りが大変になってくる事、現場管理(監理)が煩雑になりやすく細かなところに目が届かない事が目立つようになります。】
というお話を以前書いた事があります。11年ほど前に埼玉県でイケイケの建築会社アーバンエステートというハウスメーカーが倒産した事があり、大きな事件として取り上げられました。その会社は年間数百棟ほど建てていたと思います。倒産する前は急成長している地域ビルダーとして知れ渡り、TVコマーシャルも結構流していました。契約時に工事金額の80%を前払いすれば大幅値引きなどの歌い文句を挙げて、たくさんの契約をしていたそうです。しかし安く契約してもその影響を受けるのは協力業者の方で、その会社から仕事を請け負う下請け業者としては安い発注金額でやらされていたんです。
同じ時期に静岡で富士ハウスというハウスメーカーが倒産をしています。どちらも共通することは、急成長していたハウスメーカーで、その成長に資金繰りが追い付いていなかったという点です。規模的には後者の方が負債総額が大きいと言われています。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AF%8C%E5%A3%AB%E3%83%8F%E3%82%A6%E3%82%B9
上記2社の倒産した会社に家づくりを依頼された方は本当にお気の毒ですが、これが急成長をしている会社の特徴です。
多分協力業者・職人への支払いも滞り、十分な支払いができていなかったと思われます。そうなると仕事への熱意、こだわり等なくなってしまいます。仕事を一所懸命やっているのに安い給料で働かされたらどうでしょうか?仕事をまじめにやろうなんて思いませんよね。労働に見合う対価があるから一生懸命働いて、喜びも得て家族も幸せになれると思うんです。それが結局安い金額で仕事をやらされると、現場で悪い方に反映されてしまうんです。見えなくなる部分はそれなりに、見える部分は綺麗に造る・・・それが注文住宅の怖いところです。私は職人が高い給料がもらえるように高額な金額を払ってほしいと言っているのではなく、建物にも適正価格というものがあるという事です。
一生に一度かもしれない何千万の大金を払って造る家、すべての方がなるべく安く建てたいと思います、当然ですよね、私もそう思います。でも家を建てる方で一番勘違いしているのが、最初は計画図面しかない無の物(建売住宅は別ですが)にお金を払っている事を忘れてはいけないと思います。そこでうまく人間の心理を突いて営業してくるのが前述の会社です。
大手ビルダーやハウスメーカーの中には、見積金額から15%~25%もの値引きをして契約をしようとする会社(営業マン)がいます。そんなに値引きが出来ても会社が経営できるのであれば、そもそもその値引きは何なのだろうと思ってしまいます。悪く考えれば、最初からその金額を上乗せ?しているのではないかと勘ぐってしまいますよね!
ある人から教えてもらったのですが、《houseメ〇カ〇の見積り価格×0.6×1.3=工務店見積り価格》という計算式を聞いたことがあるのですが、自分で検証してみたところ、あながち『当たらずとも遠からず』のようです。
私はいつも車を例に出してお話をするのですが、新車を購入するときには、家の近くのディーラーで買おうが、隣町のディーラーで購入しようが、同じメーカーの同じ車種の同じグレードであれば、まったく同じものが買えるので、普通は安い方のディーラーで買うと思います。安く買った車だからと言って、性能が落ちるとか、乗り心地が悪いとかはないですよね。エンジンからネジ1本まですべて同じですから。しかし注文住宅の場合はそれが当てはまりません。間取りがまったく同じでも職人の手により、建物完成時の出来不出来が大きく影響されます。超安い金額で発注された協力業者(下請け業者)は利益が上がらないので、手間を掛けずに手抜き工事という問題が発生することがあるのです。
《これからこだわった注文住宅を建てたいと思っている人へ》
① 各工務店の建物仕様は、多種にわたるので、金額だけで決めるのは危険。
② 高気密・高断熱住宅を建てたいと思っている人は、予算も検討しながら自分にとってどの程度のスペックが妥当なのか見極めて計画しないと、建築費用ばかりかさんでしまう。(もちろん予算に余裕のある人は最高の気密・断熱を推奨します)
③高気密・高断熱住宅を建てる事は、ランニングコストが大幅に低減されるが、同じくらい大事なのが造り手の技術である。せっかく断熱性能の良い素材を使っても、技術が伴わなければ断熱性能が半減してしまう恐れがある。
③ 工務店で建てている建物のスペックも当然重要だが、その会社の考え方(コンセプト)や経営者トップがどんな理念で家づくりに取り組んでいるか実際に話を聞いてみる事も必要。
④ 現場で働いている職人に聞くと、その工務店の本当の良さ・悪さを教えてくれる。(でも実際はなかなか聞きづらいですよね)
⑤ 工務店の一番の特徴がわかるのが、その工務店が建てた家にお邪魔していろいろお話を聞くのが一番正確な間違いのない情報である。(でもその工務店でOB宅訪問のような取り組みをしていないと駄目ですし、今は新型コロナウィルスの影響でそういう取り組みを中止しているところもあります。弊社も今は中止にしています)
注文住宅は車などの価格勝負の世界ではなく、現場の職人が造る技術勝負の世界だという事です。