2024.10.26
パッシブハウスの メリット・デメリット
この記事を書いた人
サンエム建設株式会社代表取締役 大山剛人
パッシブハウスを中心とする高気密・高断熱住宅の専門家
建築歴45年、創業は1999年。100年快適に住める健康住宅を思い高気密・高断熱を極めパッシブハウス住宅をわかりやすくお伝えします。
ここではパッシブハウスのメリット・デメリットをお伝えしたいと思います。パッシブハウスの特徴を理解したうえで住環境を整えることが最大限のプラス効果を引き出すことが出来ます。
【5つのメリット】
①《光熱費の大幅な削減になる》
弊社で行った実証実験により、パッシブハウスの1年間の電気・ガス代及び売電価格による光熱費の収支額はほぼゼロに近い値となりました。間取や周辺環境により金額の多少の差異は出て来ますが、大幅な光熱費の削減に貢献します。
②《ヒートショックで命を落とすことがなくなる》
家の中はどこにいてもほぼ同じ室温で管理されているので、寒暖差によるヒートショックが原因で死亡することがありません。パッシブハウスは超高気密超高断熱に加え全館空調方式を採用しています。ですから建 物内のどこにいても 24 時間、夏季は約 26~28℃、冬季は 約 19℃~22℃の室温を保ちます。玄関・トイレ・浴室等も前述に近い温度設定になります。
③《暑い寒いの不快なストレスがない》
どこにいても一定温度なので、1階の床付近の温度と2階の天井付近の温度差が少なく、そのため空気の対流が起きにくく、冬季に足元が冷えたり、顔が火照ったりという事がなくなります。また冷暖房時でも換気設備によるゆっくりした風の流れにより冷気・暖気を運びますので、風を身体に直接受けることはありません。冬季の晴天時は、昼間の日差しを上手に室内に取り入れることにより、夜もその日射エネルギーだけで暖房を賄うことが可能です。
④《結露に強い》
見える部分に殆ど結露することはありません。外壁内には充填断熱だけでなく外気側に外断熱を施工します。いわゆるダブル断熱工法 です。窓は樹脂サッシでトリプルガラス、ガラスの四方には樹脂スペーサーが取付けられています。逆に怖い部分が、見えない部分の壁体内結露です。壁体内結露については、事前に結露の有無を計算し安全性を確かめています。断熱材 の素材や厚み、組み合わせにより結露が発生する場合があるからです。高性能な断熱 材を使用しても結露が発生する家にしてしまったらカビダニの発生を助長してしまいますので 事前の結露計算は重要です。 また完全密閉に近い状態になりますので、虫の発生が極端に少なくなります。
⑤《遮音性能が良い》
超高気密・高断熱にすることにより、遮音性能も向上します。外から車の騒音が聞こえたり、室内で子供が大声で遊ぶのが外に漏れたりすることを気にせずに暮らすことが出来ます。
【5つのデメリット】
①《建築費がアップする》
超高気密・高断熱仕様にするために、より高性能な建築材料を使い、特殊な施工、精密な施工内容も増えてくる為建築費もアップします。どのくらいアップするかはPLANにより違ってきますので、詳しいことは弊社までご連絡下さいませ。
②《冷暖房の最適環境になるまでに時間がかかる》
冷房期、暖房期共に広い室内空間を1台のエアコンで稼働させるため、稼働開始からゆっくり時間を掛けながら室内を最適温度にしていきますので時間を要します。通常は24時間365日の間、冷暖房、換気の稼働を行い、最適な室内環境を作り出しています。
※春秋の気候の良い期間は、一時的に冷暖房を停止することもできます。
③《各居室が一定室温になるので、人により温度感覚が違う場合がある》
建物内のどこにいても一定室温の環境を作り出します。しかし人は年齢により暑さ寒さの感覚温度が違ってきますので、各室ごとの温度設定はできません。居室ごとの室温は風量調整(吹出しルーバーの開閉)で行います。
④《冷暖房・換気を優先するためPLANに制約を受けることがある》
パッシブハウスは断熱性能、気密性能を向上させるため、冷暖房工事や換気工事を優先させることがポイントになります。それにより間取りPLANや仕上げ材料に制約を受けることがあります。
⑤ 《特殊な外観・特殊なPLANには不向き 》
断熱性能、気密性能を高めるためにシンプルなPLANや外観をお勧めします。特殊な外観、凸凹しているPLANは建築費も上がり、場合によっては不可能な場合もあります。