2024.10.26
断熱材のスキンカットはOK?NG?
この記事を書いた人
サンエム建設株式会社代表取締役 大山剛人
パッシブハウスを中心とする高気密・高断熱住宅の専門家
建築歴45年、創業は1999年。100年快適に住める健康住宅を思い高気密・高断熱を極めパッシブハウス住宅をわかりやすくお伝えします。
近年住宅の高気密化・高断熱化を推進するために、断熱材の高性能商品がたくさん出てきているようです。
その中でも気密性能に優れた硬質ウレタンフォーム吹付断熱材というものがあります。この断熱材はポリオールという液体とポリイソシアネートという液体を撹拌混合することにより泡状に膨らむプラスチック系の断熱材です。
この断熱材の特徴は、断熱性能はもちろんですが、細かい隙間などにも入り込みやすく、気密性能が向上するという事です。
住宅では、主にA種3(100倍発砲)と言われる物が使われています。A種1H(30倍発砲)という種類もありますが、価格的、施工的にはまだまだ少ないと思われます。最近は円安やロシア・ウクライナ紛争の影響で原材料不足になり、価格の高騰が続いています。
この膨らんだ泡状の中に細かな空気の層があり、それが断熱の役目をし、空気に触れている外側面はやや硬い膜に覆われていています。
硬質ウレタンフォーム吹付断熱材 A種3の特徴としては、①湿気を通しやすい ②仕上がり面が平らにならない ③小さな隙間がなくなり気密性能を上げやすい ④価格がグラスウール等の断熱材と比較して高い 等々があり、特に②の仕上がり面については、凸凹の表面を刃物でカット(スキンカットと言います)することが、しばしばYou tubeで取り上げられ、スキンカットをすると断熱材の中に水蒸気が入り込み断熱性能を低下させ、スキンカットはNGのような事を言っている動画もいくつかUPされてますが、果たしてそうなのか?
下のYou tube動画は、硬質ウレタン吹付断熱材では大きくシェアを広げているアクアフォームという会社が、第三者検査機関に透湿抵抗値の測定を依頼、ウレタンフォームのスキンカットしてない素材とスキンカットした素材の値の比較動画になります。
高気密・高断熱の家づくりの論評でおなじみの、松尾設計室 松尾和也氏が登壇している動画がありますが、それによると透湿抵抗値はどちらもほぼ同じ数値という結果が出ました。
※透湿抵抗値:その素材が湿気の通しにくさを表していて、数値が大きいほど湿気を通しにくい、小さいほど通しやすい。
そもそも硬質ウレタンフォーム断熱材(A種3)は透湿抵抗値が小さく、素材自体が湿気を通しやすいので、スキンカットしていても同じ透湿抵抗値になるのは当たり前、なんでスキンカットはダメという論評が広まったのか理解に苦しむところではあります。